米下院は21日、医療保険改革法案を可決した。医療業界に対する規制の変更や数千万人に及ぶ無保険者の削減を目指す。
下院本会議は賛成219対反対212で同法案を可決、内政上の最重要課題と位置付けていたオバマ米大統領にとって大きな勝利となった。大統領は直ちに署名し、正式に成立する見込み。
そこで趣味の映画観賞から、アメリカの医療保険制度の実情がわかる作品を紹介します。シッコである。シッコとは病気というような意味があり、アメリカの医療制度をもじっている。アメリカは先進国で唯一、国民皆保険のない国。医療保険未加入者が約5,000万人に達し、また保険加入者に対しても、あらゆる手段を講じて保険金の支払拒否をおこない、利益を上げる営利主義一辺倒の医療保険会社や製薬会社。それに癒着、取り込まれた政治家(アメリカではかつて民主党のヒラリー・クリントン議員がファーストレディとしての立場(当時)から公的医療皆保険制度の整備を求めたが、議会の反対により頓挫したことがある)という構造を暴き、事実上、崩壊に瀕している状況のアメリカ医療制度に対して、イギリス、フランス、カナダ、キューバなどの医療制度と対比させ、保険会社に関係する女性医師からショッキングな告発があるなど、これまで公然と触れられることの少なかった米国医療の暗部を赤裸々に描き出している。
そして最後はあの9.11にからめる形で取材が進む。9.11テロのとき、事件の起きたグラウンド・ゼロにはボランティアで多数の救護士が駆けつけた。彼らの多くは粉塵の中で救護活動を続けた結果、深刻な呼吸器障害を煩い、職を失い、政府の援助ももらえないまま暮らしている。一方、テロ事件を起こした犯人グループは、キューバにあるグアンタナモ基地に収監され、万全の医療体制に守られていた。ムーアは元救護士たちを連れ、キューバに乗り込む。基地に向かって拡声器で叫ぶムーア。「この人たちに、中の囚人と同じ医療を受けさせてください!」
キューバでの撮影が、事前の渡航許可を米政府から得ていなかったとして米財務省による調査が入った。その後、不法入国の容疑をかけて上映中止をチラつかせた
この映画で初めて知ったのだが、キューバはラテンアメリカで最も医療制度が進んだ国だそうで、もちろん全国民が無料で診療を受けることができる。キューバの病院は、グアンタナモで門前払いを食ったムーアたちを受け入れ、「9.11の英雄」として手厚く治療する。このあたり、キューバ政府の意図を感じないではないが、アメリカが見放した患者をキューバが診てくれたのは事実。保険会社から多額の寄付をもらい、「国民皆保険は社会主義の始まりだ」とヤジって導入を阻む米国の政治家たちは、まさにバリバリの社会主義国家かつアメリカの敵なのである。レンタルされているので是非この機会にご覧になってみて下さい。